- 「陸屋根の家がおしゃれで気になっているけど、雨漏りをしやすいってことはあるの?」
- 「雨漏りをする原因は普通の家と同じ?」
- 「修理を行う場合、費用の相場はどのくらい?」
日本の住宅における屋根の形状は様々です。
建築技術の発展がめざましい現代において、家は単一のデザインを脱し、個性的なものがたくさん揃っています。
デザインを選べるというのは消費者からすれば嬉しいことですが、種類の増加に比例してメンテナンスのバリエーションも増えています。
どの家でも同じようなケアをしていれば良いというわけではないのです。
本記事では、数ある屋根の中から「陸屋根」を取り上げ、雨漏りの原因と修理方法、費用の相場についてお話します。
「陸屋根」とは?
「陸屋根」は「ろくやね」と呼び、ほとんど傾斜を持たない平面上の屋根を指します。
勾配が付いていないため、屋上設備を充実させやすく、主にビルやマンションなどの高層建築物、病院などの特殊建築物に多く用いられています。
主に機能を重視した設計ですが、そのシンプルなデザインには定評があり、住宅にも採用される例が増えています。
また、豪雪地方や台風の多い沖縄地方では、機能性の面から比較的陸屋根が採用されやすくなっています。
1. 陸屋根のメリット
陸屋根にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
- 屋上スペースを確保し活用することが出来る
前述の通り、陸屋根とはほとんど勾配を持たない屋根のことです。
勾配が無いということは、様々な設備を設置することができるということです。
バルコニーやベランダの代わりとして使用したり、日当たりの良さを活かして家庭菜園を楽しむことも出来ます。 - メンテナンスが容易
勾配が無い為、掃除や補修工事を比較的簡単に行うことが出来ます。
勾配屋根なら足場を組む必要があっても、陸屋根であれば必要ない場合もあります。 - 建築スペースを広く取ることが出来る
陸屋根は天井が平面になるため、勾配屋根と同じ天井高であっても、居住空間を縦に広く取ることが可能です。
これを活かして吹き抜けを作ったりすることもできるため、建築上の制約からもある程度解放されます。
2. 陸屋根のデメリット
次は陸屋根のデメリットをみていきましょう。
- 夏場は最上階が暑くなる
断熱材の性能にもよりますが、天井と屋根の間に空間が無い陸屋根では、屋根に降り注いだ直射日光の影響を受けやすくなります。
ただでさえ暖かい空気は上へ昇る性質を持っていますから、何かしらの対策を施す必要があります。 - 屋根裏部屋が存在しない
陸屋根ではいわゆるロフトを設けることが出来ない為、勾配屋根に比べて収納スペースの点で引けを取ります。
ロフトを必要とするまでもない収納スペースが別に確保できている場合は、特に気にならないでしょう。 - 比較的雨漏りを起こしやすい
陸屋根最大のメリットである「非勾配」は、捉え方によっては最大のデメリットとも考えられます。
水平である以上、雨水を排水する機能は勾配屋根に比べれば大きく劣ります。
勾配屋根以上にしっかりとした防水施工、メンテナンスが大切になります。
陸屋根からの雨漏り!その原因は?
「雨漏りをしやすい」陸屋根ですが、その原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
1. 防水シートの劣化
陸屋根は水平であることから、雨水を溜めやすくなっています。
水が長時間防水シートを湿らせることで、防水シート自体の劣化が早くなります。
また、日当たりの良さが災いして、紫外線や太陽熱といった外的ダメージを常に受け続けることになり、これも劣化を早める一因となります。
陸屋根の床にひび割れやめくれ、ふくれが見当たる場合は要注意です。
施工不良や経年劣化など原因は様々ですが、このような箇所が見当たる場合は防水シートが劣化している可能性があります。
放置すると被害が拡大して修繕も大規模になってしまうため、早めに手を打つようにしましょう。
2. ドレンの排水不良
「ドレン」とは床に設置されている排水溝のことです。
水平な床に雨ざらしになっているため、落ち葉や虫の死骸など様々なゴミが集まってきます。
これらが集合してドレンを詰まらせることにより、スムーズな排水を困難にしてしまいます。
陸屋根における雨漏り原因の中では比較的対策がしやすく、ゴミを取り除くだけでも雨漏りが甲斐性する場合もあります。
ただし、長期間にわたって排水不良を放置していた場合は、隠れた個所に別の問題が潜んでいることもあるので、一度業者にチェックしてもらうのが良いでしょう。
3. 「パラペット」の劣化
「パラペット」とは、雨水が外壁に垂れ落ちたり、歩行者の落下を防ぐために端部に設けられている立ち上がりの箇所です。
重要な役割を担うパラペットですが、その形状から特に傷みやすい箇所でもあります。
パラペットの上部に天板と呼ばれる板金が張られているものでは、板金が劣化して穴が開き、そこから雨水が侵入することで雨漏りの原因を作り出します。
陸屋根の雨漏り修理における種類と相場を紹介
本項では、陸屋根の雨漏り修理を行う際の種類と、その相場についてお話します。
1. FRP防水
FRP防水は、繊維強化を施したプラスチックの層を床面に形成することで、雨水の侵入を防ぐ防水工事です。
非常に軽量な防水層を形成するため、建物にかかる負担をかなり軽減できるのが特徴です。
また強度も非常に高く、時には屋上駐車場に採用されることもあるため、床面に負荷のかかることが想定されるケースに適しています。
住宅であれば屋上庭園や物置の設置などがこれにあたります。
一方、強固な防水層は揺れなどの影響を受けやすく、ひび割れを起こしやすいといった弱点もあります。
これを防ぐためには、定期的にトップコートを塗布するメンテナンスが欠かせません。
1㎡あたりの単価:4,000~7,500円
2. ウレタン防水
ウレタン防水は、液体状のウレタン樹脂を塗装することで防水層を形成する方法です。
塗装を施す工程のみのため、安価かつ短期間で一定の効果を得られるのが特徴です。
また、塗布するという特性上、少々複雑な構造であっても対応することが出来るのも強みといえます。
ただし、他の防水工事に比べると耐久性の面で劣るため、メンテナンス頻度は高めになります。
1㎡あたりの単価:2,500~7,000円
3. シート防水
シート防水は、その名の通り防水効果を持ったシートを床面に張り付けていく方法です。
安価でありながらシート状のため耐久性にも優れており、様々なデザインが容易されているのが特徴です。
一方、シートの大きさは一枚一枚決まっているため、広い面に施工する際、どうしても継ぎ目が発生します。
複雑な形状の場合は、シートをその形に合わせて切り抜く必要があるため、施工性はそれほど高くありません。
1㎡あたりの単価:2,100~7,500円
4. アスファルト防水
アスファルト防水には、アスファルトを主原料としたシートをバーナーで炙りながら張り付けていく「トーチ工法」と、粘着剤で張り付ける「冷工法」の二種類があります。
防水性能、耐久性、ともに最高品質を誇りますが、非常に重い為建物に大きな負荷をかけることになります。
こうした特性上、主に新築時に用いられることの多い工法です。
まとめ
本記事のまとめになります。
- 屋上スペースを活用できる
- メンテナンスがしやすい
- 建築スペースを広く取ることが出来る
- 夏場は最上階が暑くなる
- ロフトを設けることができない
- 雨漏りを起こしやすい
- 防水シートの劣化
- ドレン(排水口)の排水不良
- パラペットの劣化
近年、住宅でも目にする機会の増えた陸屋根。
おしゃれなデザインを長く活かすためにも、メンテナンスは定期的に行いましょう。