玄関の雨漏り
  • 「室内の雨漏りなら分かるけど、玄関からの雨漏りは聞いたことが無い……」
  • 「あまり聞かない部位からの雨漏りは、ひょっとして危険信号?」
  • 「雨漏りを起こす原因と、その修理法について知りたい」

    多くの場合、雨漏りは屋根の排水不良や破損によって引き起こされます。
    屋根に瑕疵が発生している場合、その下にある室内が影響を受けるわけで、したがって多くの雨漏りは居住スペースに確認することができます。

    しかし、屋根だけが雨漏りを起こす原因となり得るわけではありません。
    様々な原因が複合的に絡み合う、そもそも原因が屋根に無い、といった場合は、普段なら考えられないような場所に雨漏りが発生することがあります。

    本記事では、あまり聞かない「玄関からの雨漏り」について詳しく解説するとともに、その修理法についてご説明します。

    玄関から雨漏り?原因は何?

    それではさっそく、玄関から雨漏りを引き起こしている原因を探っていきましょう。

    一般生活ではあまり馴染みのない言葉も出てきますが、要は雨漏りを起こす仕組みさえ分かっていれば自ずと理解できます。

    1. 「下屋」に原因

    「下屋」とは、母屋とは別に設けられた小さな屋根のことを指し、多くの場合は外壁から飛び出す形で施工されています。
    軒下や玄関先はこのような下屋が設けられることが多く、この下屋が原因となって雨漏りを引き起こします。

    下屋は先述の通り、外壁から飛び出す形で施工されています。
    ということは、外壁と下屋には「取り合い部」が発生します。

    取り合い部は主にコーキング剤などで充填され隙間を塞がれていることが多く、このコーキング剤が劣化することで雨水が侵入します。
    その他、外壁に用いられているサイディングが劣化しひび割れ、そこから雨水が侵入していると考えることもできます。

    2. 軒樋の詰まり

    前述の下屋には、竪樋や横樋が取り付けられていることがあります。

    これは、母屋で受けた屋根をスムーズに側溝に排水するためです。
    しかし、たとえば横樋に落ち葉や泥などが堆積し、排水が上手くいかない状態が保持されると、雨水が溢れだしてきます。

    これだけでも十分厄介ですが、この状態を長く維持し続けてしまうと、最悪の場合軒裏天井に水がまわりこんでしまいます。
    玄関ポーチ、または玄関ホールの天井裏に水が入り込んでしまえば、部材を腐食させ、恒常的な雨漏りを発生させる原因となります。

    部材の腐食具合によっては、それなりに大規模な工事を余儀なくされることもありますから、樋には注意が必要です。

    3. 施工不良

    すべての住宅は、人の手によって作られています。
    人間による恣意性が関与してくれば、軽微か重大かは問わず施工不良が発生します。

    玄関からの雨漏りも、このような施工不良によって引き起こされていることがあります。
    この場合は建材の経年劣化などの原因ではないため、状況が掴めず解決に難儀することがあるでしょう。

    たとえば下屋の防水シートを規定の位置まで立ち上げていなかったことによる浸水や、各所取り合い部の詰めの甘さがもたらした浸水など、原因は様々あります。
    見えない部分に分かりづらい瑕疵が存在している場合は、専門業者でも原因の特定に難儀することがあるでしょう。

    4. 二階の雨水がまわってくることもある

    事例としては稀ですが、母屋に発生した雨漏りの要因が、玄関への漏水といった形で顕在化することもあります。

    住宅は一つ一つ作りが違うため、内部がどうなっているかは壁を壊して見るまでは分かりません。

    たとえば屋根に用いられている板金が錆により腐食し、そこから雨水が侵入したと仮定します。
    屋根の下には防水シートが張られているため、運良くこれが作用して二階では雨漏りが起こりませんでした。
    しかし建物内部に水が溜まっていることは確実で、水はどこかに排出する必要がありますから、必ずどこかに瑕疵が現れます。

    入り込んだ水が様々な箇所を経過して、最終的にまったく関係の無い「玄関の雨漏り」といった形で見えるようになります。

    こうした複雑な原因を見抜くには、様々ある業者の中でも特に雨漏りの修理に特化した業者に修理を依頼することが大切です。

    業者は玄関の雨漏りにどんな調査を行ってくれる?

    それでは、雨漏りを修理してくれる業者は、具体的にどのような方法を用いて雨漏りの原因を探り出すのでしょうか。

    ①目視調査
    雨漏り修理において基本となる項目で、シミやひび割れなどの雨漏り要因を目で見て確認していきます。
    ②散水調査

    怪しいと思う箇所に水を撒き、雨漏りを再現する調査方法です。
    水をかける角度や時間を調整し、どの部位からどのようにして水が入り、どのような経路をたどって顕現しているのかを調べます。

    ③赤外線サーモグラフィを用いた調査

    温度の高低を分かり易く色で表示するサーモグラフィを用い、建物内に照射したのち著しく温度の低い箇所を特定します。

    明確かつ不自然に温度が低くなっている部位は水が流れている可能性が高い為、これによって見当をつけピンポイントで調査を行います。

    大部分は目視調査になりますが、原因の特定が難しくなれば散水調査やサーモグラフィによる調査が行われます。

    玄関からの雨漏りを修理する方法と費用の目安

    最後に、玄関から起きた雨漏りを修理する方法についてお話します。
    費用の相場も併せて載せておくため、参考にしてください。

    1. コーキングの打ち替え

    コーキングは部材と部材の取り合い部に使われることが多く、優れた施工性と防水性を備えています。

    しかし耐用年数が短い為、雨風に晒される部分ではすぐに劣化してひび割れを起こしてしまいます。
    これを防ぐためにも、劣化が認められるコーキングは撤去したうえで新しいものを打ち直します。

    注意したいのは、少しでも安く済ませようと「増し打ち」を検討することです。
    とにかくひび割れが塞がっていればいいからと、既存のコーキングの上に増し打ちを行うと密着性が悪くなり、ただでさえ短い耐用年数をさらに短くしてしまいます。

    コーキングの劣化が認められたら、迷わず全撤去打ち替えを選択しましょう。

    費用の目安
    全撤去打ち替えで5~20万円程度

    2. 樋の撤去・交換

    雨樋が古くなって劣化したものであれば、スムーズな排水が困難になっている可能性があります。

    詰まっていたゴミを取り除いて排水機能を復活させられる程度であれば問題ありませんが、穴が開いていたり部材が外れていたりする場合は撤去と交換を検討しましょう。

    瑕疵があるのに見て見ぬふりをしていると、雨漏りの要因を作ってしまうだけではなく、強風によって吹き飛び近隣住民を危険に晒すことになってしまいます。

    費用の目安

    住宅の規模や取り換える本数にもよるが、おおむね8~20万円程度

    3. 屋根の修繕

    最後は屋根の修繕です。

    屋根は言わずもがな家の一番上に位置するものであり、したがってここから水が入るとあらゆる雨漏りの原因となってしまいます。
    素直に二階の部屋から雨漏りしてくれればまだ分かり易いものの、様々な経路をたどった末、まったく関係の無い玄関から雨漏りを引き起こすことも考えられます。

    たくさんの経路をたどるということは、それだけ多くの部材が雨水による攻撃を受けているという何よりの証拠です。

    たとえば板金部に錆が認められるのであれば交換する、瓦屋根がずれていたら修理する、どうしようもないときは葺き替えも視野に入ります。

    費用の目安
    • 瓦ズレの修理・交換
      1~5万円
    • 下地の補修・張替
      5~30万円
    • カバー工法および葺き替え
      60~200万円

    まとめ

    いかがでしたでしょうか。

    普段は起こり得ないような雨漏りが発生すると焦ってしまいますが、原因をしっかりと特定することで対処が可能です。

    玄関から雨漏りを起こした時のポイント
    • 【原因】
      • 「下屋」を疑う
      • 軒樋が関与している可能性も
      • 携わった業者による施工不良
      • 直接関係しない箇所からの雨漏り
    • 【修理方法】
      • 劣化したコーキングの打ち替え
      • 雨樋の撤去や交換
      • 屋根そのものの修繕

    住宅は定期的なメンテナンスが重要です。

    普段からよく観察することを心掛け、不安な点があれば専門業者に相談してみましょう。