「鉄骨造の住宅に住んでいるんだけど、雨漏りを起こした……」
「雨漏りが起きる原因は、木造住宅とどう違うの?」
「鉄骨造特有の原因があるなら知りたい!」
「修理するとしたら、どのくらいの費用が必要になるの?」
もともとは工場やビルなどの大規模建築物に採用されてきた鉄骨造ですが、最近では一般住宅にも採用されるようになってきました。
鉄骨造は鉄骨の厚みにより「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」に区別されますが、住宅に用いられるのは主に前者の「軽量鉄骨造」です。
木造と比べて柱や壁を少なくすることが出来る為、より開放感のある間取りを実現させることが可能です。
魅力の多い鉄骨造ですが、建物である以上雨漏りの問題は無視できません。
本記事では「鉄骨造」にフォーカスし、雨漏りの原因と修理方法、修理を行う際の費用相場についてご説明します。
鉄骨造から雨漏り!その原因とは?
まずはじめに、鉄骨造の建物から雨漏りを起こす原因についてお話します。
構成する部材が違う以上、重複する部分もありますが、木造には無い原因があります。
1. 「ALCパネル」の目地から浸水
鉄骨造の建物では、主に外壁には「ALCパネル」が用いられています。
【メリット】
- 火に強い
不燃材料であり、無機質の原料から生成されるため火災の際にも有毒ガスを放出しません。 - 強度が高い
内部に特殊防錆処理を施した鉄筋やスチール製の金網が組み込まれており、軽量ながら高強度を実現しています。 - 断熱性が高い
パネル全体に設けられた微小な気泡により、普通コンクリートの約10倍の断熱性能を誇ります。
【デメリット】
- 継ぎ目が多い
一枚のパネルを何枚も外壁に張り付けていくことになるため、必然的に継ぎ目が多くなります。 - 防水性能が低い(水を吸い込みやすい)
断熱性を高めるために設けられた気泡は、同時に水を吸いやすくなっています。
一度水を吸うと膨張やひび割れの原因となるため、基本的にALCパネルの防水性能は低めです。 - 比較的高価
軽量かつ高強度、耐久性にも優れるALCパネルは、他の建材と比較しても高価です。
総合的なコストパフォーマンスには優れますが、瞬間的な費用では優位性に欠けます。
二つあるデメリットのうち、「継ぎ目が多い」ことが雨漏りの原因になり得ます。
ALCパネルの継ぎ目はコーキング剤を充填して止水しますが、コーキング剤の耐久性はさほど高くなく、しばらくすると劣化してひび割れを起こします。
ただでさえ継ぎ目の多いALCパネル、そこかしこのコーキングがひび割れを起こせばそれだけ雨水が侵入するリスクは高まります。
2. 外壁のクラックから浸水
ALCパネルは強度が高いと述べましたが、それはあくまでも適正使用の場合においてです。
たとえばコーキング剤が劣化し、そこから雨水が侵入、ALCパネル内部にも水が浸透、膨張と収縮を繰り化した末にひび割れ(クラック)が発生します。
ひび割れ(クラック)が生じれば、そこからいくらでも雨水が侵入してきます。
ALCパネルの先には内部構造があるため、これを貫いて内部にまで浸水を許してしまいます。
3. サッシ周りからの浸水
サッシ周りから浸水する主な原因は、以下の通りです。
- コーキング材の劣化
サッシ周りの隙間にはコーキング剤が充填されていますが、これが劣化することにより雨水が侵入します。
また、サッシそのものが劣化してコーキング剤の状態に関わらずそこから浸水する可能性もあります。 - 耐風性能に乏しい
サッシにはメーカーが定めた耐風基準がありますが、これを大幅に超える強風を受けた場合、雨水が侵入してくることがあります。 - 施工不良
防水シートや防水テープの密着不足、仕舞い込みの甘さ等により、通常使用において雨水が侵入してくることがあります。
鉄骨造からの雨漏りを修理する方法
本項では、鉄骨造の建物から雨漏りを起こした際、どのような修理を行えば良いのかご説明します。
鉄骨造だからと言って必ずしも大規模になるわけではなく、基本的には木造と同じです。
1. コーキングの打ち替え
コーキングの耐用年数は長くて10年、短ければ5年程度です。
台風の多い地域、豪雪地帯、寒暖差の激しい地方、等であればより耐用年数は下がります。
コーキングは部材と部材の間に生じる隙間を埋める止水材であり、コーキングの劣化は雨漏りの原因に直結します。
コーキングの劣化は素人でも目で見て分かるため、そろそろかな、と思ったら場所を決めて定期的に観察しておくと良いでしょう。
修理を行う場合は、既存のコーキングの上から「増し打ち」するのではなく、必ず古いものを撤去してから「打ち替え」を行うようにしましょう。
2. 外壁塗装
雨漏りには直接関係ないように見えますが、塗装も重要な項目です。
塗装は建物に意匠性を加えるだけではなく、耐候性を高めたり撥水性を高めたりする機能的な側面もあります。
塗装の耐用年数はおおむね10年程度で、これを過ぎると塗装が劣化して「チョーキング」が発生します。
塗膜が劣化すれば耐候性や撥水性が落ち、雨水に対しての防御力が乏しくなり、外壁に加わるダメージが大きくなってしまいます。
結果、ALCパネルが水を吸って膨張し、ひび割れ(クラック)が発生、そこから雨水が侵入することで雨漏りの原因を作り出します。
コーキング同様、外壁の劣化も素人目で分かるため、頃合いを見て外壁や屋根の塗り替えを行いましょう。
3. 屋上防水
工場やビルなどの大規模な建物はもちろん、近年では住宅にも屋上付きのものが増えてきました。
意匠性と機能性を備えた屋上付き物件ですが、良いことづくめではありません。
通常、屋上の床面には防水加工が施されており、これが雨水から建物を守る役目を担っています。
耐用年数はおおむね10~15年程度で、劣化が進むとひび割れたり、シート防水の場合はめくれあがったりします。
壁とは違い、降ってくる雨がすべて床に当たるうえ、一定時間溜まることもあるので、受ける影響は外壁の比ではありません。
雨漏り修理における各種費用の相場を紹介
本項では、箇所別に雨漏りの修理費用の相場をご紹介します。
建物の規模や瑕疵の程度、修理方法によって変動するため、あくまでも目安として参考にしてください。
【外壁に関係する修理】
- コーキング打ち替え :10~50万円
- ひび割れ(クラック)補修:5~10万円
- 外壁塗装 :60~160万円
- 外壁建材の張り替え :120~300万円
【サッシ周りに関係する修理】
- 窓枠の修理 :3~25万円
- 天窓周辺の掃除 :3~4万円
- 天窓の撤去・交換:20~90万円
【屋上に関係する修理】
- ウレタン防水 :1㎡あたり / 4,000~6,000円
- シート防水 :1㎡あたり / 5,000~10,000円
- アスファルト防水:1㎡あたり / 5,500~8,000円
まとめ
本記事のまとめになります。
【鉄骨造に用いられるALCパネルの特徴】
メリット
- 火に強い
- 軽量かつ高強度
- 断熱性に優れている
デメリット
- 継ぎ目が多い
- 防水性能が低い(吸水性が高い)
- 他の建材と比較して高価
【鉄骨造から雨漏りを起こす主な原因】
- ALCパネルの劣化
- 外壁のひび割れ(クラック)からの浸水
- サッシ周りからの浸水
どんな構造の建物であっても、経年劣化は免れません。
軽微な瑕疵でもないがしろにせず、都度修理を施せば長持ちさせることが出来ます。