- 「住んでいるマンションで雨漏りが発生したんだけど、家賃って下げてもらえるの?」
- 「減額される条件があるなら教えてほしい」
- 「トラブルに発展するのは嫌なので、予防策についても知りたい」
持ち家ではなく、賃貸で発生した雨漏り。
自分の家ならば業者を読んで修理してもらえば済む話ですが、賃貸だとそうはいきません。
住居とはいえ借りものですから、DIYで直すのは言語道断です。
かといって勝手に業者を呼ぶわけにもいかず、困ってしまう方もいるのではないでしょうか?
本記事では、賃貸マンションや賃貸アパートで発生した雨漏りに焦点を当て、家賃の減額がどのような場合に認められるのか、トラブルを回避するにはどうすれば良いのかをお話します。
現在賃貸にお住いの方も、これから入居する予定の方も、是非参考にしてください。
賃貸住宅で雨漏りを起こしたらどうすればいいの?
一般的に、賃貸物件で発生した雨漏りの責任の所在は、借主ではなく貸主であるとみなされる傾向にあります。
つまり、借主側が雨漏り修理の費用を負担することは基本的に無いと考えて差し支えありません。
ただし、それは「雨漏りの原因が貸主に無い」と判断された場合に限ります。
ケースの列挙は省略しますが、何らかの事由により雨漏りの原因が借主にあると判断された場合は、この限りではありません。
賃貸住宅で雨漏りを起こしたら、まずはじめに管理会社や家主、大家さんに連絡しましょう。
勝手な判断でDIYを行ったり、特に気にならないからと雨漏りを放置していると、修理費用を負担させられる可能性もあります。
賃貸住宅で雨漏りが起きた場合の家賃はどうなる?
本項では、賃貸住宅で雨漏りが起きた際の家賃についてお話します。
賃貸での雨漏りが、主に貸主の責任であることは前項で述べた通りです。
とはいえ、雨漏りが起きた時点で問答無用に家賃の引き下げが行われるかといえば、そうではありません。
家賃の改定が認められるか否かは協議の結果によります。
1. 家賃の改定が認められるケース
賃貸契約書には、「賃料は下記に該当する場合、協議の上改定することが出来る」と記されています。
- 周辺の同種の建物の賃料と比較して、賃料が不相当となった場合。
- 土地または建物に対する租税、その他の負担の増減により、賃料が不相当となった場合。
- 土地、または建物の価格の上昇低下、その他の経済事情の変動により、賃料が不相当となった場合。
たとえば①については、周辺に存在する同程度の建物の家賃と比較して、自身の居住するマンションやアパートの賃料が高すぎると思われる場合には、家賃の値下げ交渉が出来るということになります。
②は、たとえば固定資産税が大きく変わった場合に、③は経済に何かしらの変動が生じた場合に、家賃の値下げ(および貸主による値上げ)が協議を経て決定されるということを表しています。
「協議」というのは分かり易く言えば双方の話し合いのことで、双方の合意がなければ家賃の値下げ、値上げのいずれも実現されることはありません。
賃貸契約書の中では、「雨漏りが発生したことによる家賃の改定」については明記されていません。
2. 家具や家電が汚損・故障した場合
雨漏りは様々な被害をもたらしますが、中でも厄介なのが家具・家電への影響です。
- 階上から滴った水がテレビや電子レンジに当たって破損
- 汚れた水がソファや布団に付着し、シミが発生
- 湿度が高くなることにより、カビが生える
- パソコンなどの精密機器に水が滴り、故障
補償に関してはケースバイケースであり、火災保険が適用できる場合と、家主や大家さんに請求できる場合があります。
民法の改正に伴う、賃貸住宅の雨漏り対応の変化
平成29年5月26日に成立した民法改正では、民法606条第1項(賃借人による修繕等)で次のように定められています。
- 賃借人は、賃借物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。
- 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
このことから、借主が原因となって引き起こされた雨漏りについては、貸主に修繕の義務はないことが明確になりました。
しかし、貸主に雨漏りの修繕が必要であることを再三訴えているにも関わらず修繕が行われない場合や、緊急の事情がある場合は借主の方で修繕を行っても良いとされています。
雨漏りについては、改正された民法611条で以下のように定められています。
- 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
- 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
こちらでは、「賃借物の一部が使用できなくなった場合」において、その部分に対する割合で家賃の減額が認められます。
雨漏りの修繕は貸主の義務
前項でも述べた通り、貸主が提供している物件で雨漏りが発生した場合は、貸主はその修繕を行う義務があります。
これは民法でも、賃貸借契約書でも明記されています。
第601条
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
第606条
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修理をする義務を負う。
つまり、物件を貸すことで収益を得る以上、その管理は義務であるということです。
天井や屋根、ひいては建物というのは総じて「雨風を凌ぐ」ものであり、雨漏りを起こすことは建物としての機能を欠いた状態です。
民法601条、ならびに606条を要約すると、「建物の本質的な機能を欠いた状態で部屋を貸し、収益を得ることは許されない」ということになります。
貸主が雨漏りの修繕に応じなかったら?
いくら民法で定められているとはいえ、すべての貸主が法律を熟知しているわけではありません。
中には修繕を訴えても聞く耳を持ってくれない貸主も存在します。
そのような場合に借主が取ることのできる手段には、次のようなものが挙げられます。
1. 管理会社に連絡する
最も多いパターンとしては、賃貸住宅の所有者は貸主でも、管理会社が別に存在するケースです。
貸主が管理会社にどこまで業務を委託しているかはケースバイケースですが、貸主が家賃の値下げ交渉に応じてくれない場合は、管理会社に連絡するのが最も手っ取り早いでしょう。
第三者を介入させることで、より正確に物件の状態を知ることが出来る上、家賃の値下げが妥当であると判断されればその後の対応もスムーズになります。
2. 自分で修繕するのは奥の手
奥の手になりますが、どうしても貸主が交渉に応じてくれない場合、自分で業者を手配して雨漏りを修繕してしまうことも可能です。
その場合は、工事が終わってから工賃を貸主に請求する、または家賃と相殺してもらうといった事後調整が行われます。
とはいえ、雨漏りが起きれば物件としての価値が下がってしまうため、家主が自ら業者を雇って修繕を行うのがほとんどです。
万が一に備え、自分で修繕を行う手段もある、と念頭に置いておく程度でよいでしょう。
まとめ
本記事のまとめになります。
- 賃貸物件での雨漏りは、借主ではなく貸主(家主、大家さん)に責任がある
- 雨漏りの修繕は貸主の義務
- 雨漏りによって部屋が一部使用不可になった場合は、割合に応じて家賃を減額してもらえる
- 貸主が交渉に応じない場合は、管理会社に連絡
よほどのことが無い限り、雨漏りが借主の責任になることはありません。
あらぬトラブルを避けるためにも、こうした情報は事前に仕入れておくのが良いですね。